■作品名 源氏たまゆら ---お花5個が満点---
■ジャンル 小説 [読みやすさ]
[ 専門度 ]


■著者 田辺聖子
■イラスト 岡田嘉夫

■出版社 講談社文庫

■書籍コード 4-06-185925-0 c0195

■初版 1995年4月15日

■備考 中の装丁カラーで綺麗です。
■□■ 感想 ■□■

  再び田辺源氏の一冊である。こちらは、「新源氏物語」より更に、さら〜に砕けている。なんといっても特筆すべきは、物語りの進行が光源氏自身の「おれ」という一人称で進められていく点だろう。第二章は「薫君/かおるのきみ」が、やはり「ぼく」という一人称で話しを進める事になる。
 著者があえて採用した、この一人称という文体は、古典のとっつきにくさを見事に解消しているだけでなく、主人公への感情移入が容易なため、普段、小説を手に取らない人でも物語の世界へ入りやすいという特徴がある。又、全編を通して美しい色彩のカラーイラストがふんだんに使われいるので、鑑賞という点から見ても楽しめる作品だ。
 ただし、原文の上品な雰囲気は玉砕しているので、正統派王朝文学‥‥いわゆる「もののあはれ」な源氏物語や、貴公子然とした光源氏を期待する方にはお薦めできない。なぜならば、主人公の光源氏は、野獣のような妖しい雰囲気を持ったプレーボーイとして描かれているからだ。
 語り継がれてきた原典イメージの瓦解とでも言うのだろうか? 私自身は、こうゆう光源氏がいても面白みがあって良いと思うので、企画本的な要素が高い源氏物語小説も好きであるが、本書を手に取った源氏物語マニアの間では、賛否両論の意見に別れそうな気配である。
 従って、本書をお薦めできるのは、これはこれ、あれはあれ、と割り切って源氏物語を読める方か、従来の光源氏を女々しく感じたことがある方、若しくは新しいイメージの光源氏に会ってみたい方、という事になる。
 上記にあてはまる読者であれば、全体を通しコバルト文庫的な恋愛小説の雰囲気をかもし出しているので、時代小説が苦手だという読者であっても、ごく普通の恋愛小説として楽しめるに違いない。



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