騎士道精神




「ちょっ、ちょっとちょっと何してんのよおおおお!!」


 場所はミモザ邸。
 これからデグレアへ偵察に向かおうという、その早朝。
 広間から聞こえてきた金属音に、家主であるミモザはぎょっとして思わず大声を上げた。
 というのも。

「っ、…やはりあの時決着をつけておくべきでした…!」
「ふん……ならばお前は今この場所に居ない事になるがな…!」

 屋内だというのに、双方手加減なしの鍔迫り合い。
 そんな緊迫の事態に陥っているのは、ルヴァイドとシャムロックであった。


「やめなさいあんた達!ここをどこだと思ってるのっ」
「「 ミモザ邸だ! 」」
「わかってりゃイイってもんじゃないのよ!!?」
「「 口だしするな! 」」
「やるなら外でやりなさ───いっ!!」
 それでも構わず競り合いを続ける二人に、元来短気なミモザがぷつりと切れた。
「っ………やめないのね?」
 ぼそりと呟いたミモザの声が、しかし二人に聞こえる筈も無く。
 その後徐にぼそぼそと詠唱を始めたところでやはり二人の耳にはそんな音は入らないまま。
「後悔させたげるわっ…!」
 召喚されたのはペン太くん。
 ほやんとした丸っこい見てくれの割りに、恐るべき破壊力を持つその召喚獣が現れた瞬間。

「ま、待ってーっ」

 これまたほやんとした、けれど今度はしっかと人間の。
 トリスが、ぱたぱたと広間へ駆け込んで来た。
 すると。
「「 トリス!? 」」
「…あら?」
 面白い程にあっさりと、騎士二人はぴたりと止まってこちらを見やる。
「だ、駄目!ペン太くん爆発しちゃ駄目〜っ」
 そして、自らが爆発する事で敵を攻撃するその丸っこい生物(?)を、それを防ぐようにぎゅっと抱き締めると。
「!!危ないトリスっ」
「そんなもの離してっ!」
 互いに向けられていた剣をあっさりと下ろし、我先にとトリスへと駆け寄って来る。
 トリスの隣でその一部始終を見ていたミモザは、あんぐりと口を開けたままで見た目通りに呆れかえっていた。
「それをこちらへ投げるんだトリス!俺が斬る!」
「えっ!?」
「いや私が!!さあトリスっ」
「な、何言ってるんですかっ、還ってもらえば済む事ですっ」
「「 駄目だ!!斬る!! 」」

 ───トリスに抱き締められているペン太に対する嫉妬じゃない、どう見ても。

 けれど、そんな脳裏に浮かんだ事すら言葉にするのは馬鹿馬鹿しい、と言わんばかりにミモザはひとつ溜息をついて。
「…貸しなさいトリス。それ還すから」
「え?あっ、はい!お願いします、ミモザ先輩っ」
「「 ……… 」」
 面白くなさそうな騎士二人も、ほっとしたようなトリスの笑顔につられるようにほわんと和んで。
「ったく、………トリス。そこのお馬鹿さん二人に、今後絶対家ン中で決闘なんてしないようにってよく言い聞かせておいて頂戴!」
「…え?」
 トリスが思わず顔を向けると、二人はバツが悪そうにそっと視線を逸らす。
「どうやら私が言っても無駄みたいだから。…いいわね?お返事は!」
「───はっ、はいっ」
「よろしい。…じゃあねトリス。出発は一時間後よ」
「はーい」
 トリスの良いお返事を聞き、うんうんと肯いてミモザは広間を退室した。

 残されたのは、騎士二人とトリスの三人組。

「え、…と」
 先程ミモザに釘を刺された事もあり、そろそろとトリスが二人へ視線を向ける。
「あの。…聞いてたよね?もう家の中で決闘しちゃいけません、って」
「…ああ」
「ええ」
「えっとね。…でも、あの。ケンカした時には、両方の意見をちゃんと聞くべきだって思うから。…だから…聞いてもいい?」
「「 ……… 」」
 ルヴァイドはぐぐっと眉間に皺を寄せ、シャムロックは困ったように視線をうろつかせる。
 対照的なその二人の、共通点であるのは『騎士』であるという事。
 そして、今回二人がぶつかった原因にもそれは少なからず関わっていた。
 というのも、

『デグレアへ入り込むなど危険この上無い。ならば大切なトリスを護るというのは、騎士たる自分の役目なのだ』

 そういう騎士道精神が、二人の騎士を奮い立たせた為であった。つまりは、デグレアへ出向くトリスの一番近くに居る役目を買って出たわけで。
 そしてお互い、その役割を譲る気が無かったものだから。
「…えと。…お話してくれない?」
「………………」
「…ええとね、トリス。…すまないが、これはやすやすと口に出せるような事じゃないんだ…」
 ことりと小首を傾げて問うトリスに、辛うじてシャムロックが薄く笑みつつ言葉を紡ぐ。
「でも…」
「大丈夫。もう室内で決闘したりしないから。…ね?」
 じゃあ他の場所ではするんじゃあ?
 という思いで、不安そうにトリスが言葉を捜せば。
「……大丈夫だ、トリス。お前を不安にさせるような事は、もうしない」
「…え?」
 徐にルヴァイドが言った言葉に、思わずトリスが少し赤くなる。
「俺は騎士だ。今はお前を護る為に在りたいと思う。…だからもうお前にそんな顔をさせるような真似はしない」
「───」
「ル、ルヴァイド…」
 鈍いトリスにでもわかるような、どことなく甘ったるいルヴァイドの言葉。面白くないのはシャムロックで。
「───…私も同じ想いです。…いえ、想いと言うなら、私だって負けない。貴女の笑顔を護る為であるなら、私はどんな苦難へも立ち向かいましょう」
「シャ、シャムロックさ……」
「ふん。では早速その『苦難』とやらに立ち向かってもらおう。…潔く身を引け」
「───それとこれとは全く別問題です!」
「…何だと?」
 ぴり、とまたも張り詰める不穏な空気。

「な、…何ぃ〜???」

 その中に放り込まれたトリスは、やっぱりどこか鈍い為に二人がぶつかり合う理由もわけがわからず。
 ただひたすら、集合時間までの一時間弱をこんな剣呑な雰囲気の中で過ごさなければならないのかと思ってちょっとだけ泣きそうになっていた。
 そして、その剣呑ムードな広間の扉の向こうでは。


「……………恐らくトリスさんは私と二人で潜入するつもりでしょうに。無駄なエネルギーを消耗していますねえ…。……まあ、私の知った事ではありませんけど」

 隠密行動がお得意の一流忍者が、ひとりほくそ笑んでいた。




──すいません。シオンさんらばーなものですから。(潔く謝罪/笑)
騎士キャラには、やはり「君の為の騎士になろう」という台詞をEDで吐いて頂きたいというのに…(遠い目)
その点、シオンさんはべったりくっついていてくれますからvvv(そこか)
…やはり対決モノは楽しいです。


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